専攻長からのメッセージ
ようこそ。まずは応用生命化学専攻と応用生命工学専攻の概要を説明します。両専攻は一体となって教育・研究活動に取り組んでおり、大学院入試では共通の試験問題を出題しますので、皆さんは両専攻をまたいで研究室の志望順位を決めることができます。
農学と聞くと農業を想像しがちですが、農学は今や我々の周りにあふれる生命全般を対象とする「総合的な生命科学」を進める研究領域となっています。この中で、本専攻は、植物、動物、微生物、人間とほぼ全ての生物を対象として基礎から応用に至る幅広い生命科学研究を行っています。そして、生命・食・健康・環境・生物資源に関連した諸問題の解決を目指しています。
ポスターやガイダンスブックにある「x バイオ」を見て何だろうと思われた方は多いと思います。“x”は乗算(かけ算)やカップリングを表す「クロス」の意味です。本専攻では、人間を含む多様な生物を対象として基礎から応用に至る研究、分子、細胞、組織、そして個 体レベルの研究、化学、生物、物理、そして、数理に至る様々な方法論を使った研究などがマルチレイヤー(多階層)で進んでいます。そこには、「基礎x 応用」、「生物x 化学」、「生命(ウエット)x 数理(ドライ)」、「分子x 個体」など無限大の 組み合わせが存在しており、両者のシナジー(相乗)効果によって多彩な研究が進んでいます。また、“x”にはextra や extreme の“x”の意味も含んでおり、従来の生命科学の枠を超えて、社会にイノベーション(変革)を起こす研究に挑み 続けたいという本専攻の思いが込められています。研究室紹介ページをご覧頂ければわかるように、研究室の個性は千差万別であり、ほぼ全ての生命科学の領域をカバーしていると言えるくらいです。現在のサイエンスはボーダーレスとなっていることからも、工学、薬学、医学などとの境界領域の研究や、他研究領域との連携も盛んに行われています。
本専攻の前身は農芸化学科であり、明治10 年に設置されました。この学科においてビタミンB1 や火落酸(メバロン酸)などの重要な生体分子が発見されており、設置当初から生命科学研究が精力的に進められてきました。こういった生体分子の発見が社会にイノベーションを起こしてきたのです。今や、本専攻の研究成果は農学のみならず、医学・薬学・工学を含む社会全般で役立っています。そのため、OG・OB の皆さんも社会で幅広く活躍しています。活躍の場も食品系、化学系、製薬系、情報・通信系の企業など多岐にわたり、これらの企業で経営の中心となっている方々も多いです。学術研究領域においても、農学系のみならず他学部や、海外を含む様々な研究機関で教授として活躍する先輩達も珍しくありません。社会の至るところで本専攻のOG・OB と出会うことができます。
上述のように本専攻には30 を超える多くの研究室があります。また、一つの研究室であっても、いくつも研究テーマを持っており、まさにいろいろな顔を持っています。皆さんは、研究室選びでは悩むこととなるでしょう。さらに、いろいろな研究室が連携しており、共同研究も盛んに行われています。また、複数の研究室が合同で講義を担当するなどしていますので、所属する研究室以外の情報も十分に入ってきます。大学院入試の出願前の5月頃にはガイダンスを行っています。いろいろな研究室のHPを見たり、また、実際に研究室を見学して教員や学生さんの話を聞くことも良いですし、専攻や各研究室のホームページを是非活用して下さい。
現在、サイエンスは飛躍的に進化しています。研究室で実験するばかりではなく、AIやビッグデータも活用し効率的に研究を進める工夫が必須となってきています。この観点からは、幅広い研究分野を経験し、社会の変化に柔軟に対応できる人材が、学術領域、そして、社会全般からから求められています。本専攻のマルチレイヤーな環境はこのような未来を創る人材の育成に適していると言えるでしょう。
本専攻にはあなたの興味とぴったり合う研究室がきっと見つかります。皆さんとお会いできることを楽しみにしています。
応用生命化学・工学専攻長