大学院・専攻

先輩からのメッセージ

よい環境で学ぶということ

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修士課程1年(植物栄養・肥料学研究室)
反田 直之

 

私が漠然と研究者に憧れていた頃、研究は一人で行うものだと思っていました。メンデルが司祭をしながら遺伝の法則を示したように、どんな環境であっても自分のアイディアと努力次第で研究は成し遂げられると思っていました。しかし大学で実際の研究に触れると、自分が考えていた以上に研究を行う環境が重要であることに気がつきました。

ここで言う環境とは、モノと人、両方の意味があります。特に知識が蓄積し、高度に専門化した現代の自然科学の研究においては、多様な施設や装置、試薬などが必要なだけでなく、論理的に研究を進める上では自分と異なる知識や考え方を持った人々との議論が不可欠といえます。このモノと人、どちらにおいても私は今とても恵まれていると感じています。

大学院の課程の目的は、技術的なノウハウと、論理的な考え方を身に着けることだと私は考えていますが、これらはどこででも手に入るものではなく、人との関わりの中で学ぶものだと思います。自分と同じようにサイエンスを面白いと思う人たちと話をしたり、様々なテーマで研究を行っている人たちと議論することはとても楽しいことです。自分の知らないことをたくさん知って
いる人や、自分の思いつきもしないようなことを考えている人たちに囲まれて日々を過せることは、とても贅沢なことであるし、本専攻の学生であることの醍醐味だとも感じています。今では自分も徐々にこの“環境”の一部になれたらよいなと思うようになりました。

最後に、志望する研究室の選択に悩まれる方も多いかと思いますが、この恵まれた環境で学べるという点については、本専攻のどの研究室に配属されても共通して言えることだと思っています。みなさまがより面白いと感じる分野で、充実した大学院生活を送られることを願います。

卒業生

研究を行う上で大切なこと

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平成23年度 博士課程修了/
ブリティッシュコロンビア大学Department of Microbiology and Immunology 博士研究員
大谷 啓志

 

私は東京工業大学の生命理工学部を卒業した後、修士課程より本専攻の醗酵学研究室に配属され、研究生活をスタートしました。醗酵学研究室で修士・博士論文研究を行い、現在はブリティッシュコロンビア大学(カナダ)でポスドクとして研究を続けています。この文章を読んでいる方達は、大学院で研究を行うことを考えていると思います。ここでは私が本専攻で研究を行うことによって特に勉強になった点について書こうと思います。

研究を行うにあたり重要なことはいくつかありますが、その中でも私は「分かっていないことをどのようにして明らかにするかを考える」ということが非常に重要であると思います。分かっていないことに対して漠然と実験を行っても答えに行き着くことはそう多くはありません。分かっていないことについて深く掘り下げ、どのような点がどの程度分かっていないのかを具体的にし、その中で自分はどの点をどの程度明らかにするべきかという目標を設定します。そしてゴールに向かってどのようなアプローチを取っていくのかを具体的に計画しなければなりません。本専攻は教員が考えたことをただ学生にやらせるのではなく、学生がこういった能力を引き延ばせるように教育している研究室が多くあると感じます。私も修士課程・博士課程の5年間でこの点においてよい教育を受けたと思います。またこういった“問題解決能力”は研究以外の仕事や日常生活でも非常に重要な能力だと思います。

大学院進学に際してはそれぞれの興味や目的に応じて研究室を選んでいくと思いますが、本専攻では良い研究者が育つように教育している研究室が多くあるように思います。皆さんが本専攻での研究生活を通して成長できることを期待しています。

これから研究室を選ぶ皆さんへ

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平成22年度 博士課程修了/
北海道大学農学研究院流動研究部門 社会・地域・国際連携分野 食品機能化学研究室 特任助教
吉田 綾子

 

私は、博士課程3年間を本学の食糧化学研究室で過ごしましたが、ここで学ぶことが出来たおかげで、現在は、北海道大学の農学研究院で特任助教という職を得ることが出来ました。これから皆さんは、本格的な研究生活に足を踏み入れていくことと思いますが、私のこれまでの研究生活を振り返って、自分が大事だと思うことを皆さんにアドバイスしたいと思います。

研究において、研究テーマの選定は一番大事です。私の場合は、日本女子大学の修士課程で、乳酸菌の免疫調節作用について研究をしていましたが、その研究に近いということもあり、本学の博士課程では、プロバイオティック乳酸菌の経口免疫寛容誘導を強化する効果について研究をしました。自分が興味を持っている分野であったことから、それほど苦労せずに、すぐ研究に取り組むことができました。研究テーマが興味をもてる内容であることは、研究生活を実りあるものにするために非常に重要です。皆さんの中には、まだはっきりとやりたいことが決まっていない方がいるかと思いますが、その場合には是非、研究室の学生に、どのような研究をしているか、どういった点を面白く感じているのかを聞いてみてください。きっと研究テーマの選定に役に立つ情報が得られると思います。

研究テーマとともに大事なのが研究室の環境です。どんなに良い研究テーマを選ぶことができたとしても、ほとんどの場合、研究はそれだけではうまくいきません。ノーベル賞をとられた山中伸弥先生は、「研究者は1割あたれば大成功。失敗が多く日常のストレスは大きい。」という内容のコメントをされています。研究はその内容が革新的であればあるほど前例がないためうまくいきにくいのです。うまくいかない時、いかにそのストレスに向かい合い研究に集中するのか、私の場合は、これを研究室の同僚や友人に相談することで乗り越えてきました。皆さんには、自分にあった研究室の環境を選ぶことで研究の日常のストレスを少しでも緩和し、充実した研究生活を送って欲しいと思います。

研究室にはそれぞれ固有の文化があります。それこそ、皆さんの性格がそれぞれ違うように、先生方の指導方法もさまざまです。研究室見学などの機会を上手に利用して、十分な情報を得たうえで自分にあった研究室を選んでください。

研究に対する情熱の源泉を失わないために

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平成18 年度 博士課程修了/日本農薬株式会社総合研究所 生物ユニット 研究主任
岡田 敦

 

皆さんどのような気持ちでこのガイダンスブックをご覧になっているでしょうか。もうすでに自分がやりたい研究は決めていますか、魅力的な研究が多くどの研究室に進んでよいか悩んでいるのでしょうか?

私は修士課程から本専攻で植物の耐病性機構関連研究に携わり、博士課程終了後2年のポストドクターを経験し、現在では農薬メーカーの研究職に就いています。研究者の先輩として研究の魅力と難しさを皆さんに少しでも伝えられたらと思います。
学生時、私は植物研究で農業分野に貢献したいという漠然とした理由と研究者に対する憧れが後押しして本専攻に進学しました。私は深く考えず情熱が先行するタイプです。
しかし研究成果を出すという事は誰も知らない事実を明らかにする事で当然簡単に出来る訳はありません。私は情熱を保ち続ける事が研究を成功させる上でもっとも重要だと考えていますが、その熱意を保ち続ける事は難しい。私は浅い動機で進学し、憧れだった植物研究に着手したものの何も成果が得られないまま1年以上経ってしまいました。長期間上手くいかない事が続くといい結果が出ないことが当たり前に思える様になり、失敗をあまり振り返らず盲目的に実験をやり続け、最初の情熱を失いそうになっていた事を思い出します。皆さんも研究を始めるときっと同じ体験をされると思います。そんな時は他の研究者たちとディスカッションすることをお勧めします。学際的な専攻ですので多くの視点から見つめ、一緒に考え助言を与えてくれ、自分の研究の意義や魅力を再発見できます。熱意を取り戻せたらもう心配はいりません。無責任ですがきっと上手くいきます。生みの苦しみを味わう程成功した時の喜びと研究成果は大きいものになりますし研究に対する情熱もより大きくなる筈です。研究者は皆この苦しみと喜びのコントラストに魅せられてしまうのです。

研究者の一員となる皆様のこれからの活躍を楽しみにしています。

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